一瞬、凍りついた。 ギュンって心臓のあたりに痛みが走った。 「うーん、ペットね・・・。やめた方がいいですよ。」 検査のために訪れた皮膚科の先生が迷いなくそう言った。 血液検査はまだこれからだ。 前々からお世話になっているこの先生は、 boyがもっているアレルギー体質についてよく知っている。 「え・・・?」 予期しなかったタイミングで突然否定されて固まるboyと私。 それでも、先生のこの言葉の後に、なにか救いの言葉が続くのではないかと 私もboyもじっと先生の目を離さずに見つめながら待った。 でも、先生は次の言葉を発しなかった。 まるで、今言った一言に尽きますよという意思を私たちに示すために、 わざと次の言葉を言わなかったような、そんな気がした。 「先生、犬やうさぎの「毛」がアレルギーに悪いんですよね? 毛の抜けにくいトイプードルなんかならどうですか?」 医者に対して、素人がこうした解決策を押しつけるのは なんの意味もないことは分かっている。 それでも、救いようのない強い言葉に 完全に金縛りにあっているboyを目の前に この際、医者に嫌われようがかまわない。 どこかに救いを感じるような一言が先生の口から出てくるまで 私は先生に対して食いついていこうと思った。 「アレルギーはね、毛に対してだけではないんですよ。 お散歩に出れば、色んな犬の毛やダニ、ほこりや、そういった様々なアレルゲンを、犬はおうちに連れて帰ってくるんです。」 boyはどんな顔をして先生の話を聞いているんだろう。 顔が見たかった。 だけど、真横に座っているboyの顔をさりげなく見ることはできない。 私が顔を動かした拍子に、何かのバランスが崩れて泣き出してしまうのではないか、 そんな風に思えて振り向くことができない。 「まあ、でも血液検査をしてからにしましょう。」 先生は私たち二人の絶望につつまれた空気を察したのか ちょっとだけ、やさしい表情になってそう言った。 「先生のところにもね、子どもが二続きをみる
『著作権保護のため、記事の一部のみ表示されております。』